温泉郷をめぐる旅パート2~九州⑤続・黒川~
2009年 09月 30日
街の中にももちろん、湯めぐりで行くどこの旅館さんの周りにも木・樹・木。統一されていない様々な種類の木々が織り成す統一された空間。いろ~んな木があるんです。いろんな実がついてるんです。山の中にちょっと迷い込んでしまったんじゃないかと思うくらい。「本当に自然の中にある温泉地なんだなー」と、アシスタント高橋とともになごんでおりました。
ところが!
一見このように自然にあふれているように思える空間、なんと、全て人口のものだったんです・・・!
約40年前、黒川は名も知れない静かな温泉地だったそうです。「黒川なんて」と、地域の中でも常に下に見られる存在。しかし、そんな「売れない」温泉地の中で、1軒だけ、なぜかお客さんであふれる旅館があったというのです。その旅館のご主人は木を扱うのが上手で、今の黒川のように、旅館の回りは雑木で囲まれていたそう。そこに気付いたことから黒川の快進撃が始まります。
お金のない黒川。雑木を買うお金はありません。みんなで山から木を持ってきました。
ただ植えても「自然」を演出できません。先のご主人の指導を仰ぎながら、少しずつ少しずつ、計画的に「自然」を作り出していきました。
また、雑木を植えるのにあわせて、景観作りも進めていきます。雑木が映える景観にするため、カラーのあるものはみんな茶や黒へと変えていきます。看板はもちろん、自動販売機、標識、工事用の三角コーンまで。
「半強制的にやったそうです。カラーのものは全部回収して、黒いものを置いてくる。そうしないと使ってくれません。」
このお話を聞かせてくださったのは、青年部の方たち。まずは宿泊した「お宿 山河」の若女将さん。どうにかして青年部の方のお話を聞きたかったので、実は青年部に所属する方のいるお宿・・・という条件で宿泊先を決めました。
若女将さん、体調不良のなか、夜分に様々なお話をしてくださり、さらには青年部の部長さんや、お話を聞かせてくださいそうな方に連絡をとってくださったりと、本当に親切にしてくださいました。
若女将さんに紹介していただき、お話をお伺いしたのは、青年部の副部長さんでもある「お宿 玄河(くろかわ)」の若旦那(といって良いのかわかりませんが)さん。忙しい中でかなり貴重な話し、熱いメッセージを届けてくれました。
黒川温泉青年部
黒川温泉観光旅館協同組合
黒川温泉では日本で始めて、独自の宿予約システムを確立したそうなんです。私たちの黒石温泉郷もそうですが、宿の予約システムというのは、それぞれの旅館がもつHP内でも予約か、じゃらんや楽天など、そういった他の予約システムを媒体として成立しています。自分の宿のHPに予約システムを搭載するのはいろいろと難しい部分があり、なかなか踏み込めません。だからといって、他の予約システムを利用すると、手数料が取られてしまうのです。
そこで、黒川では、青年部の若い力を使って、半年をかけて、上に載せた協同組合のHPの中に、独自の予約システムを構築。手数料は組合費に落ちるので、無駄にはなりません。
また、このHPにはお客さんが黒川を旅したときの写真を投稿するコーナーも作られています。
「お客さんが自分の良いと思った黒川の風景や場面を投稿してくれる。お客さん目線で黒川を宣伝してくれる。リアルな投稿だから、他のお客さんにもリアルに伝わります。」
青年部だからこそできる発想ですよね。若い力を最大限に活かして。
他にも、従業員さん向けの慰安企画などにも取り組んでいるとか。
「黒川は遊ぶところも全然ないんです。だから遊びの場を作り出していかないと、従業員さんたちがもたないんです。やっぱり一緒に旅館を作っていく仲間ですから。コロコロ従業員さんがかわってしまっては困るんです。黒川で働くのは楽しいと思ってもらえるように。」
青年部のみなさんのほとんどがUターンなんだそうです。
「若いときはどうやって旅館から抜け出そうかばかり考えていました。継ぐのが嫌で。でも都会に出ていて、遊びに帰ってきたときに、同世代のみんなが楽しそうに何かやっているのを見て、戻ってきたくなって・・・」
都会に出て、戻ってきたときにわかる自分たちの地域の魅力。
だけど、戻ってくるきっかけがそこにあるからこそ戻ってこれるんです。青年部では、お客さんに向けての活動よりも、内に向けた、自分たちのための活動に力を入れています。
帰ってこいよと声をかけて、思わず帰ってきたくなる雰囲気をつくっておく。大事な役目です。
それぞれの旅館の浴衣を着て、湯めぐりに繰り出すお客さんたち。今でこそ一般的になってきた「湯めぐり」ですが、その先駆けともいえるのが、ここ黒川です。湯めぐりの湯札は地元の老人会が作ります。また、売り上げの一部は組合費に入り、その組合費を使って景観作りに取り組みます。
「黒川はまだ完成していないんです。今でも毎年自分たちで木を植えます。自分たちの親父たちが頑張ってきたものをここで途絶えさせちゃいけないから。」
植樹を始めたのは、今の青年部の先代。青年部を作ったのも先代なんだそう。話の中には何度も、先代への尊敬の想いが表れていました。
使い終わった入浴手形がたくさんかかっていました。願い事が書かれていたり。
「また来ます」
なんて書かれたものも多く見られました。
思わず歩きたくなる街、黒川。
もちろんそれぞれの露天風呂も素敵なものばかりでした。最近よくある「半露天風呂」ではなく、みんながしっかり「露天風呂」で、ドキドキしっぱなしでした。
でも、そんな露天風呂の魅力がなかったとしても、なんだか歩きたくなる空間。浴衣を着て、ラムネを飲みながら、猫に声をかけながら、ぶらりぶらりと歩き回る。それだけで楽しい空間です。
「また行きたい」
がそこにはありました。
「また行きたい」は自然に作られるものではないんです。湯布院も、黒川も、みんなみんな努力して、協力して、今もなお作り続けているものなんです。
常に新しい挑戦を。でも先代たちの守ってきたことは忘れずに。
上から見下ろすと、黒川も、本当にただただだだっ広い盆地。湯布院も盆地。
そしてこの津軽だって山に囲まれ、田んぼとりんご畑の広がる平野。
きっとみんなスタートはそんなに変わらないんです。気候や風土が違っても、そんなのは理由にならないんです。いかに努力し、いかに挑戦し続けるか。
盆地のパワーに負けない津軽平野パワーを!!!
たくさんの学びがあった九州。
この学びを活かせるかどうかは自分しだい。
さぁー!!!頑張るぞーーーーー!!!!!!!!!!
# by momiji-basya | 2009-09-30 21:32 | 温泉郷をめぐる旅